宮前区薬剤師会 持田雄也

 令和3年8月4日(水)に緊急避妊薬をテーマとしてZoomウェビナーを用いたオンライン研修会が開催されました。宮前区薬剤師会の身内でひっそりと行う予定でしたがオンラインということに加え、比較的ホットな話題ということもあり想像を大きく超える方々にご参加いただけました。最終的には60名を超える程になっていました。
 昨今、政府の専門調査会は「基本的な考え方案」で、性暴力などによる望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬を医師の処方箋がなくても薬局で販売可能とするよう検討する方針を決めるなど、緊急避妊薬に関し薬剤師への期待が高まっている状況です。そのためには薬剤師としてもいつでも緊急避妊薬に対応できる知識や素養を身に着けておく必要があり、今回の研修会を催すに至りました。
 講師は川崎市薬剤師会副会長の伊藤啓先生と東京慈恵会医科大学附属柏病院の産婦人科医駒崎裕美先生をお招きしてご講演をいただきました。なお、駒崎先生は私持田の大学時代のサークル仲間という縁で講演をお願いすることが出来ました。

 伊藤先生のご講演では、まず最初に緊急避妊薬を調剤する以前に現在の多くの薬局では繊細な話題である性に関することを相談できる環境が作られていないというご指摘がありました。性に関する相談を受け付けたり、性に関する製品を取り扱ったりしていない現状でいきなり緊急避妊薬を取り扱うのは性急であるため、まずは環境を整えていくべきだろうというお話がありました。同様に避妊や性病に関する知識も不足しがちである現状にも触れられました。
 そのほか、緊急避妊薬の服薬指導において口頭では確認することが憚られる情報が多いため、川崎市薬剤師会にて作成した緊急避妊薬アンケートの紹介もありました。やりにくい服薬指導への強力な支援ツールとなり得るものなので緊急避妊薬を扱う際には是非利用するべきと感じました。

 駒崎先生のご講演では広い範囲にわたり知識が得られました。月経や妊娠の基本的な仕組みはもちろんのこと、「性と生殖に関する健康と権利」の話もありました。普段意識することのない権利に関してまで進んだ知見を得られたことは収穫でありました。避妊に関しても、緊急避妊薬以外の一般的な通常の避妊法や怪しい民間療法を避妊効果を示すパール指数とともに一通り紹介いただけたため避妊のうちの緊急避妊薬の立ち位置をより正確に把握するのに役立ちました。そして主題となる緊急避妊薬のお話では、実際に処方するにあたっての注意事項や成功率など、産婦人科医ならではのリアルな話を興味深く聞くことが出来ました。

 以上の講演を終え、本当に開催してよかったと実感しております。ただの知識ではなく、価値観を動かすことができた研修会となったことをうれしく思いました。